Carole King / Rhymes & Reasons ('72)

キャロル・キング 『喜びは悲しみの後に』
【前回】 ちょっと触れました、バリー・マン『Soul & Inspiration』('00)では、J.D.サウザーの他、キャロル・キング、ダリル・ホール、リア・カンケルなど、豪華なゲスト陣がコーラスを添えていました。ゲストの話は別にしても、バリーが職業作曲家として他のアーティスト達へ提供してきた曲を自ら歌う歌声には、作者本人ならではの表現が備わっており、その深みに心打たれたものでした。同時期に発売された同傾向の CD として、ジミー・ウェッブ『Ten Easy Pieces』('96)、ダン・ペン&スプーナー・オールダムのライブ盤『Moments From This Theatre』('99)を挙げることができますが、それらはいずれも、三種の神器として神棚に供えたくなるほど素晴らしい内容のものでした。



さて。バリーが、人のために曲を書くだけではなく、自分も歌ってみようと思った … そのきっかけとして、やはりキャロル・キングの存在が大きかったようです。キャロルも'60年代には著名な職業作曲家の一人でしたが、『つづれおり』('71)のヒットにより、シンガー・ソングライターを代表する人物として、一躍人気を博したことは、皆さんも良くご存じの通りだと思います。

このアルバム『Rhymes & Reasons』は、ジェイムス・テイラーや、ジョー・ママのメンバーを中心としたバック陣を迎えた『つづれおり』『Music』('71)から、ダニー・コーチマー以外はガラリとメンバーを入れ替えて制作された、キャロルにとって4作目となるアルバム。
前2作のように、一聴しただけで耳を捉えるような曲は少なく、ゲストとして迎え入れられた腕利きセッション・ミュージシャン達の演奏も、誰かの音が突出して聞えてくるようなものではありません。なのに、アルバム全体を通して聴いた雰囲気が自然で、まるで微風がそよそよと吹いてくるのを感じているうちに聞き終えてしまう … こういう感覚のアルバムというのも、そう多くは無いと思います。
Natural Woman キャロルの本領発揮 … といったところでしょうか。
【お気に入りの3曲】
★「愛は夏の風と:Come Down Easy」
軽快で洒脱なトップ・ナンバー。今頃の季節にぴったりの曲。
★「さよならはしても:Goodbye Don't Mean I'm Gone」
愛し合った男性と別れた後も、彼の幸せを願う女性の歌。「貴方に会いたいけれど...」と、左手には赤ん坊を抱き、右手にペンを持ちながら手紙をしたためる彼女。健気な気持ちが伝わってくる。
★「なつかしきキャナン:Been To Canaan」
彼女が行った Canaan(楽園)とは、どんな場所だったのだろうか? 行ってみたい気持ちもあるけど、今はまだやらなくてはいけないこともたくさんあるし、もう少し先でも良いかな。裏で軽くビートを刻むパーカッションの音色が、楽園での居心地の良さを表している。
そして、もう1曲...
☆「喜びは悲しみの後に:Bitter With The Sweet」
チャールズ・ラーキーが弾くベースラインが利いている mellow groove な1曲。「どんなに辛くてもくじけないでね。喜びは悲しみの後にやってくるものよ」という、メッセージに励まされる。
■ member
Carole King (vo,p,key)
Daniel Kortchmar (g)
David T. Walker (g)
Red Rhodes (steel g)
Charles Larkey (b)
Harvey Mason (ds)
Ms. Bobbye Hall (per)
Ernie Watts (fl)
…
■ songs
All songs written by Carole King, except...
・ The First Day In August (C.King / Charles Larkey)
・ Ferguson Road (Gerry Goffin / C.King)
■ producer
Lou Adler
■ 過去記事
・ Writer ('70)
・ Music ('71)
・ The Carnegie Hall Concert ('97)